一九五一年のアメリカの小説フラストレーションという負のエネルギーは、マイナスのものばかりを呼び集める。そして最後に小さな悲劇として結晶するアメリカの青年が書いた、東京の外資系会社の一年間。彼はカワシマ・キヨコをどこでみつけたのかリチャード・ブローティガンは、主人公のユキコさんを最初から最後まで眠ったままにしておいたブックストアでのめぐり逢いしかし、アメリカには、貧乏もよく似合う個人的な絵葉書における、写真と民主主義の関係京都の四季を英語で三行詩に戦争は、写真うつりがいい髪や肌の色がちがえば、性的エネルギーのありかたも大きく異なってくる、という物語日常的な時間の停止した時空間。そのなかで自分を切り開き、なかにあるものを正直に直視する移動、という行為を開始することによって、人生の全責任を彼女は自分ひとりで引き受ける少年の頃、写真家は、夏の日を見ていた紙のプールで泳ぐ夏だ。トンボが飛んでいく。十字架はついに地上から解き放たれるモノクロームはニューヨークの実力LAでは笑うしかない、というLA的な態度せっかく季節が夏なのだから、タイトルに夏のある小説を読んでみよう、と僕は思ったロミオはジュリエットに誠実に。そして誰もが、それぞれの夏を越えていくスーザンが育った時代ヴァーガス・ガールという、架空の女性たちあらゆる自然に背をむけ、人工の二次元を人は言葉だけで生きていく蒼くはない時にむかってアメリカの心がうたう歌が聞こえる雨が、ぼくにオードリー・フラックの画集を開かせたある日の午後、僕は「本のオールタイム・ベスト10を選んでください」と、電話で頼まれた一度だけ読んだハメットひとりの大人として、自分の周囲にあるすべてを、全面的に引き受けることの出来る人ホーム・ベースから一塁までの、優雅きわまりないあの距離イングリッド・バーグマンの写真集を逆に見ながらジェームズ・ディーンには雨の日が似合うアイラ・ウッドの『キチン・マン』はなぜ面白いか言葉のなかだけにある日本をさまようマンハッタンの10番通りと14番通りマリリン・モンローの唇が、いまも語ることなにげなく読んだ小説のなかに、自分自身を発見する喜びと驚き。なぜこの主人公は自分なのか『タランチュラ』あとがき彼は二十一歳、ヘア・クリームでなでつけたDAは栗色に輝いていた一人称による過去形。しかし世界はいつのまにか現在。日系四世の女性の浮世。アメリカン・ドリームの外縁のいちばん外に近いあたりアメリカらしさの核心のひとつを体現している人の人物像を、完璧に近い傑作小説で読むという感動素敵な女性作家たち猛烈に仕事をする人たちの国、アメリカと、父親を描いた数多くの小説彼女は『ラスト・ショー』の町に生きる他人の虹の端に向かって人生とはなになのか。よく慣れ親しんだ世界。もっとも重要なのはおそらくこれだ愛と栄光のための戦いエドワード・ホッパーが描いたアメリカの光カウボーイ・カントリーを夢に見ながら「アンコモン・プレイセズ ザ・コンプリート・ワークス」「ザ・コンプリート ピーナッツ」「ニッケル・アンド・ダイムド」「ヨコタ・オフィサーズ・クラブ」「ファン」「ワンス・アポナ・タウン」「リーヴィング・ホーム」「フオー・ラブ・オブ・ザ・ゲーム」「ベイト・アンド・スイッチ」「フラッグス オブ アワファーザーズ」「グレーテスト・ヒッツ」一九六二年、ボストンの怪事件「ザ・ルーキー」うかつに紀行文を書かないように女たちの描く「女」が怖いこの世の終わりを見続けるうちの山にいた五人の私立探偵いま日本語は“既知の壁”に囲まれている自己都合の神などそもそも居場所はない眠れる東京の坂や谷が目覚める塩田も遊園地も…絶滅の景色が浮かぶ漱石文学の“会話”の深さに驚嘆する十年に一度の面白さと言っておこう均衡を失う日本を考えるための定点一九六七年の風景に淡い思い出が甦る大問題を語り合えない日本語の閉塞感三角形は不思議で美しく、そして怖いまことの人生の喜怒哀楽はどこへ消えた?江戸人にみる虚構の楽しみかたの極意遺構の下には歴史の論理が埋まっている名曲を生み出したスリルに満ちた共同作業もはや社会そのものが機能しなくなるのか一万年前から続く猫と人間の関係を喜ぶ報道だからこそいまも魅力を失っていないポテトでアメリカ文化が手に入る幸福自己啓発本が前提としているもの姿を隠したままの存在に気づこう巨匠と名優の軌跡の合流を読む幸せ読まなくても本質に触れた気持ち知らなかった東京が浮かび出てくるふたとおりの恐怖がやがてひとつになる映画には「消えた東京」が残っているひき続きダン・J・マーロウを読むアメリカン・ノワールの傑作「イン・コールド・ブラッド」ペイパーバックの中のトルーマン・カポーティヴァージル・ティブス・シリーズ自動車泥棒のビューイック・リヴィエラ故国を探した作家の失望の旅とは春まだ浅く、三冊の本を買った夕方飛田の絶望感、これは日本そのものの物語だバブルは消えたのか、目の前にあるのか人生を自分で考えるための材料集食事も酒も論理でつながれている消えた東京はゼニ・カネのために消えたモカを飲んだらその歴史も知ろう英文字は急速に日本語になりつつあるLAノワールの闇を歩こうジャック・リーチャーを十一冊、積み上げてみる短編小説はどうなっているのかあの映画をもう一度観たい、その1父親と息子のハードボイルド人生フォルクスワーゲンを元気に生かしつづけておくにはもっともハードなハードボイルドとは「ザ・ネーム・オヴ・ザ・ゲーム・イズ・デス」「ザ・ネーム・オヴ・ザ・ゲーム・イズ・デス」②金色の瞳に映るものはなにか「ライ麦畑」を、ぼくがつかまえるぼくのストーリー術は灰皿から始まる球場の書店に寄る 1 投球と口語の幸せな合致球場の書店に寄る 2 この上なく純粋な背景球場の書店に寄る 3 ナショナル・パスタイム球場の書店に寄る 4 ディマジオと1941年の夏球場の書店に寄る 5 野球の真理をめぐるトリヴィア球場の書店に寄る 6 テッド・ウィリアムズ・ミラクル球場の書店に寄る 7 野球小説──すばらしき題材球場の書店に寄る 8 1964年──メジャー・リーグの分水嶺球場の書店に寄る 9 ザ・ネクスト・ピッチというアート球場の書店に寄る 10 スピードと均衡球場の書店に寄る 11 the only game in town球場の書店に寄る 最終回 金銭とその支配をめぐる領域エドワード・ホッパーの場所で過ごすリアリティのなかにアブストラクトなものを見つけ出すこと彼女が自分の窓から見た世界LAの大通りを巨大なビルボード・アートが見おろしている小田急線のかたわら、木造の小さな古い家。そのなかで続いた、好奇心の持続、というひとつの人生記憶のなかで美化されて輝く懐かしい過去をもういちど現在にしようとするロマンティックな冒険これはアメリカの純文学かな。タイトルは『愛と仕事』、不思議な物語だただファミリーと言ったって、アメリカではもはやほとんどなんの意味も持たないいまになってようやく、アメリカの小さな町ペイトン・プレイスへ、僕はいこうとしている面白くない本はなぜか悲しい。そのような本を書くべきではない。これは自戒の言葉だふと書いてある二、三行の文章の面白さにひかれて、不思議な小説を僕は最後まで読んだ『絵本についての、僕の本』 まえがき小さな本のなかの、愛すべき仕掛けリトル・ゴールデン・ブックスをめぐる日々擬人化されて絵本の主人公になるすべては日常から始まる絵本は子供たちになにを教えるのか絵本、というかたちのなかでぬいぐるみの熊は、僕のすべてを知っている旅の途中。美術館の屋上。上空一万メートル。簡易食堂。ふと知り合う人たちとのなにげない会話のなかの真実占領時の日本語観を伝える貴重な証言脆弱な大企業本位・男性本位社会立体交差を無限に必要としている日本じつは奥深くやっかいな散歩、その見本「ファット・ガール」 検 索 独特の視点から贈り出された文芸書評の数々。多くの編集者が片岡義男に紹介文を依頼したのかが分かるだろう
作品一覧 公開作品 154 1 2 3 4 「ファット・ガール」 アメリカの本を読むのが子供の頃から好きな僕は、これまでじつにいろんな本を読んできたけれど、こんな本… 読 む じつは奥深くやっかいな散歩、その見本 『東京凸凹散歩 荷風にならって』 大竹昭子著 亜紀書房 二〇一九年 この本の題名のなかにある、凸… 読 む 立体交差を無限に必要としている日本 『立体交差 ジャンクション』 大山顕著 本の雑誌社 二〇一九年 カラー写真が紙に印刷してある。そ… 読 む 脆弱な大企業本位・男性本位社会 『企業中心社会を超えて 現代日本を〈ジェンダー〉で読む』 大沢真理著 岩波現代文庫 二〇二〇年 … 読 む 占領時の日本語観を伝える貴重な証言 『米陸軍日本語学校』 ハーバート・パッシン著 加瀬英明訳 ちくま学芸文庫 二〇二〇年 太平洋戦争… 読 む 絵本、というかたちのなかで 子供用とは言いがたい出来ばえの絵本、とも呼ぶべき種類の絵本が、絵本の世界にはたくさんある。 僕は… 読 む 絵本は子供たちになにを教えるのか 多くの絵本は、子供たちを教育することを目的としている。たいていの絵本は、なんらかの意味で、子供たち… 読 む すべては日常から始まる こうして英語の絵本を何冊も見ていくうちに、やがてはっきりとわかって来るひとつのことに、僕は気づく。… 読 む 擬人化されて絵本の主人公になる 絵本というかたちをとってなにごとかを描き、そして書こうとするとき、数多くの描き手あるいは書き手たち… 読 む リトル・ゴールデン・ブックスをめぐる日々 僕が持っている絵本すべてを出版社別に区分けしたなら、アメリカのゴールデン・プレス社が刊行した絵本は… 読 む 小さな本のなかの、愛すべき仕掛け 僕が持っているもっとも小さい絵本は、二冊のフリップ・ブックだ。日本語ではなんと言えばいいのだろうか… 読 む 『絵本についての、僕の本』 まえがき 絵本が僕にあたえた影響について、さきほどから僕は考えていた。影響ははかり知れない、という結論に僕は… 読 む 旅の途中。美術館の屋上。上空一万メートル。簡易食堂。ふと知り合う人たちとのなにげない会話のなかの真実 ホノルルからサンフランシスコまで、僕は本を読んで過ごした。分厚いペーパーバックをちょうど半分まで、… 読 む ぬいぐるみの熊は、僕のすべてを知っている ロンドンのサザビーで美術品の競売がおこなわれるとき、定期的にテディー・ベアーがいくつも売りに出され… 読 む ふと書いてある二、三行の文章の面白さにひかれて、不思議な小説を僕は最後まで読んだ 『ピッツバーグのミステリー』という小説は不思議な小説だった。不思議な小説、という言いかたのなかには、… 読 む 面白くない本はなぜか悲しい。そのような本を書くべきではない。これは自戒の言葉だ 面白くない本はかなり悲しい。面白くない本は書くべきではない。僕も書き手のひとりだ。面白くない本はか… 読 む いまになってようやく、アメリカの小さな町ペイトン・プレイスへ、僕はいこうとしている ぜひ読みたいと思いつつ、いつのまにか十年、十五年と時間だけ経過してしまい、読まないままになっている… 読 む ただファミリーと言ったって、アメリカではもはやほとんどなんの意味も持たない タイトルを日本語になおして理解するなら、『私の愛情の対象』だ。スティーヴン・マコーレーというまだ若… 読 む これはアメリカの純文学かな。タイトルは『愛と仕事』、不思議な物語だ 著者の名はレイノルズ・プライス。僕は知らなかったけれど、長編小説をいくつか書いていて、そのうちの何… 読 む 記憶のなかで美化されて輝く懐かしい過去をもういちど現在にしようとするロマンティックな冒険 この小説の主人公、四十八歳になるヴィック・ホーリーフィールドという男性は、実業の世界で大成功をおさ… 読 む 小田急線のかたわら、木造の小さな古い家。そのなかで続いた、好奇心の持続、というひとつの人生 小田急線の経堂の駅から歩いて七、八分、線路のすぐそばに、植草さんの自宅がかつてあった。玄関のまえに… 読 む 彼女が自分の窓から見た世界 1959年に「アメリカを代表する十人の女性写真家」のひとりに選ばれた、ルース・オーキンの『モア・ピク… 読 む リアリティのなかにアブストラクトなものを見つけ出すこと 片岡義男が大好きな画家と評する、リチャード・エステスと彼の画集を紹介する。実際に存在するニューヨーク… 読 む LAの大通りを巨大なビルボード・アートが見おろしている アメリカのビルボードは、どこで眺めても実に面白い。あの巨大さがまずいいし、風景のなかに突然、強引に割… 読 む エドワード・ホッパーの場所で過ごす ゲイル・リーヴィンの『ホッパーの場所』は、エドワード・ホッパーの描いた絵に、現実の場所や建物の写真が… 読 む 1 2 3 4