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片岡義男.com 全著作電子化計画

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書評

ふと書いてある二、三行の文章の面白さにひかれて、不思議な小説を僕は最後まで読んだ

『ピッツバーグのミステリー』という小説は不思議な小説だった。不思議な小説、という言いかたのなかには、書きかたがまったく僕の好みではない、というような意味も含まれる。好みではないままに、マイケル・チャボンの第一作であるこの小説を、僕は最後まで読んだ。
 あるひとりの大学生が、学校を卒業した年のひと夏に体験したさまざまなことがらが、夢のなかの出来事のように、ファンタジー的に描かれていた。因果関係がはっきりしないままに、なにがどうなっていくのかもよくは説明されないまま、いろんな断片が現れては消え、消えては現れつつ、ファンタジーは…

底本:『水平線のファイル・ボックス 読書編』光文社 一九九一年

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