VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

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書評

ただファミリーと言ったって、アメリカではもはやほとんどなんの意味も持たない

 タイトルを日本語になおして理解するなら、『私の愛情の対象』だ。スティーヴン・マコーレーというまだ若い作家の、最初の長編だそうだ。派手に目を引く本ではないけれど、なんとなく気になる。だから僕はこの本を買った。
 表紙の絵がよく出来ている。読み終えてからもう一度よく見ると、この表紙絵は作品の内容を巧みに象徴していることに気づく。言いえて妙、という平凡な言いかたがあるが、描き得て妙、とでも言えばいいだろうか。
 主人公はニューヨークの私立学校で小学生を教えている先生だ。さほど尊敬される職業ではないし、経済的にも恵ま…

底本:『水平線のファイル・ボックス 読書編』光文社 一九九一年

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