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片岡義男.com 全著作電子化計画

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書評

いまになってようやく、アメリカの小さな町ペイトン・プレイスへ、僕はいこうとしている

 ぜひ読みたいと思いつつ、いつのまにか十年、十五年と時間だけ経過してしまい、読まないままになっている本というものが、心のなかを捜せば何冊もあるはずだ。そのうちの一冊、グレイス・メタリアスの『ペイトン・プレイス』を、僕はついに読もうとしている。『ペイトン・プレイス』は僕がまだ十代の子供だった頃、アメリカでたいへんなベスト・セラーになった長編小説だ。いろんなかたちで広く大きな話題になり、そのこととのつながりの上で、作者は自分の運命が激変していくのを体験しなければならなかった。
 この『ペイトン・プレイス』を、僕は当時のペーパー…

底本:『水平線のファイル・ボックス 読書編』光文社 一九九一年

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