面白くない本はなぜか悲しい。そのような本を書くべきではない。これは自戒の言葉だ
面白くない本はかなり悲しい。面白くない本は書くべきではない。僕も書き手のひとりだ。面白くない本はかなり悲しい、という自分自身の言葉を、自戒の言葉にしなければならない。
いま僕の目のまえに六冊のペーパーバックがある。読みはじめて面白くないから途中でやめたもの、あるいは、読みとおしはしたものの、読んだことをうれしい気持ちで全面的に肯定することの出来ない六冊だ。たまたま手もとに残っているそのような本を集めてみたら、六冊になった。
ジム・ドッジという人の『フェイド・アウトせずに』という小説は、手に取…
底本:『水平線のファイル・ボックス 読書編』光文社 一九九一年