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書評

じつは奥深くやっかいな散歩、その見本

『東京凸凹散歩 荷風にならって』
大竹昭子著 亜紀書房 二〇一九年

 この本の題名のなかにある、凸凹という表現の意味を、著者の大竹さんは本文の第一行で解き明かしている。「東京は坂と丘と谷の街である」という意味だ。こんな地形のところによく江戸を作ったものだ、と不思議な思いをするほどに、東京は凸凹している。
 凸凹は海抜に置き換えてもいい。ゼロ・メートル地帯、という言いかたで知られているのは、海抜がゼロ、つまり海面と陸地がおなじ高さの地域だ。反対は高台だろう。僕が知っている唯一の高台は、下…

『週刊朝日』二〇一九年十二月二十日号

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