これはアメリカの純文学かな。タイトルは『愛と仕事』、不思議な物語だ
著者の名はレイノルズ・プライス。僕は知らなかったけれど、長編小説をいくつか書いていて、そのうちの何点かは相当な評判になったらしい。名前の語呂には、なんとなく説得力がある。
タイトルは、日本語になおすなら、『愛と仕事』だ。このようなタイトルのもとに、百五十ページのペーパーバックで、いったいどんな物語を読ませてもらえるのか。表紙のデザインは、平凡だがそれほど悪くはない。と言うよりも、なかなか思わせぶりではないか。だから僕はこれを読んでみた。
不思議な物語だった。大学で創作を教えている中年の男性が主人公だ。ほと…
底本:『水平線のファイル・ボックス 読書編』光文社 一九九一年