記憶のなかで美化されて輝く懐かしい過去をもういちど現在にしようとするロマンティックな冒険
この小説の主人公、四十八歳になるヴィック・ホーリーフィールドという男性は、実業の世界で大成功をおさめた、テキサス州の億万長者だ。彼は一九五七年にロング・アイランドのハイスクールを卒業した。そのハイスクールが、廃校になることがきまった。四エーカーの土地に建つ煉瓦造り三階建ての建物は、いっさいの備品とともに、競売で一般に売りに出されることになった。
それを知ったヴィックは、母校であるそのハイスクールのすべてを、自分ひとりで買い取ってしまう。自分がそのハイスクールで高校生だった一九五五年から五七年にかけての状態を、経費がいく…
底本:『水平線のファイル・ボックス 読書編』光文社 一九九一年