『お勝手に、』おばあさんの贈りもの
小説家・エッセイストの石田千さんのエッセイの連載「お勝手に、」が始まります。
「お勝手に、」というタイトルからどのようなことが想像できるでしょうか? 「お勝手」とは台所の意味です。ちょっと古い、昭和の台所というニュアンスがあります。ついこの間までは使われていたことばですが、いまや死語になりつつあるのかもしれません。石田さんは台所を「お勝手」と呼びます。「お勝手」には食べることと関係のある道具がたくさんあります。そのなかから毎回ひとつの道具を選び、「勝手に」、つまり自由に、その道具をめぐって書いていただきます。食べるためにどんな道具を選んで、それをどのように使っているか、石田さんの生きる基本を楽しんでください。
石田さんと片岡義男さんは「群像」という雑誌の鼎談による文芸時評で、はじめて顔を合わせたとのこと。その後、石田さんの著書『箸もてば』を片岡さんが書評したこともあります。「食事も酒も論理でつながれている」という気持ちのよい論考です。
「食事も酒も論理でつながれている」
石田さんには「わたしの片岡義男」も書いていただきました。選んだ一冊は『彼らと愉快に過ごす』。やはり道具やモノについて関心が深いのです。
「ひとが生きるうえで大切なこと」
鎌倉の出版社『港の人』のnoteでは、画家の牧野伊三夫さんとの往復書簡「月金帳」を連載中です。石田さんの回には、いつも最後に一句あります。
「月金帳」
◆著者紹介
石田千(いしだせん)
1968年6月4日福島県生まれ、東京都育ち。日常を切り取ったようなエッセイが特徴的。
2001年『大踏切書店のこと』で第1回古本小説大賞を受賞。2011年『あめりかむら』で第145回芥川賞候補。2012年『きなりの雲』で第146回芥川賞候補、第34回野間文芸新人賞候補。2016年『家へ』で第154回芥川賞候補、第38回野間文芸新人賞候補。エッセイ集に『月と菓子パン』『きつねの遠足』『夜明けのラジオ』『唄めぐり』などがある。
撮影:石井孝典
◆片岡義男からひとこと
片岡義男
二〇一七年の石田千さんのエッセイ集、『箸もてば』はたいそう良かった。僕はこの本を書評した。日常での食べものについて、石田さんは書いていた。食べるものは台所で作る。作るにあたっては、いろんな道具を使わなくてはいけない。思いがけない物が、たくさんある。それらをめぐって、石田さんの文章が成立するなら、それは一回ずつ、ウエブサイトでの連載になるはずだ、と僕は考えた。この考えが実現していくのが、この連載だ。
◆ 最新刊(2021/10/15公開)
最終回|第16回|おばあさんの贈りもの
石田さんのおばあさんの貴美子さん。亡くなって、すでに十三回忌もすませました。貴美子さんが元気で喜寿を迎えたとき、お祝いの返礼にしたのは伝統工芸品のお茶筒。山桜の木の皮を使った樺細工の茶筒の底には銘入れがあります。記念の品は貴美子さんより長生きして、貴美子さんのスピリッツをはらんだまま、いまも石田さんのお勝手で活躍しています。→ 作品を読む
※石田千さんの連載「お勝手に、」は今回が最終回です。長らくのご愛読ありがとうございました。
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