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片岡義男.com 全著作電子化計画

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エッセイ12作品を公開

『彼の後輪が滑ったー片岡義男エッセイ・コレクション』『コーヒーもう一杯』からエッセイ12作品を片岡義男.comで本日公開いたしました。

・『彼の後輪が滑ったー片岡義男エッセイ・コレクション』(太田出版/1996年)より8作品

この『雨降り花』という物語は『波と風のグッド・ニュース』という連作長編のなかに、劇中劇になぞらえて編中編と言うかたちで収録された短編だ。主人公が最初に書く短編が『雨降り花』ということになっている。全文を採録しておくが、小説上の失敗とは、僕の場合は、一例としてこういうことだ。失敗の根源は——。

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東京をオートバイで走るのが、彼はあまり好きではない。せまい道路には自動車が多すぎ、しかもその自動車が信じられないほどに優遇されている。人も多く、むちゃくちゃな歩き方をしている。それがなくなる真夜中は走りやすいが、だから真夜中に走るわけではなく、真夜中の手ざわりみたいなものを楽しんで走るのだ。

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町のほうからまっすぐに走ってきた大きなオートバイは、ガソリン・スタンドの手前で減速し、中に入ってとめた。若いライダーは駐車スペースの端にある水道の蛇口にかがみこみ、水をほとばしらせ、自分の頭をさしだした。その間にオフィスから若い女の子がひとり出て来た。オートバイのわきまであるき、彼女は待った。

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その男と逢ったあの町は、なんという町だったろう。町のまんなかのすこし手前で、道路はふたつに分かれた。その分かれ目のところが三角形の緑地帯のようになっていて、誰かの像が、大理石の台のうえに立っていた。その台にもたれて、男がひとり、すわっていた。

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実家の物置のにあったオートバイのシートを開いてみると、折りたたんだ地図が入っていた。それは千葉県の地図だった。外房の、九十九里の海のところに、シールが一枚、はりつけてあった。レタリングといい配色といい、洗練されているとは言いがたい楕円形のシールで、ぼくがこの地図に一種の記念としてはりなおしたものだ。

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おなじ大学のおなじ学部を卒業しているふたつ年上の友人は、ぼくのことをいつでも「おい、片岡」と呼ぶ。彼との物語をどのへんから書いたらいいだろうかと思いつつこうして書きはじめていまふと思い出したのは、つきあいがはじまってまだ間もないころ、秋の夜更けに、「おい、片岡」と、電話がかかってきたときのことだ。

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もう何年もまえ、ぼくとぼくの友人、そしてその二人にとって共通の女友だちのような女性の三人が、ある夏の日、小淵沢の駅前で落ち合った。気が遠くなりそうなほどに美しい、快晴の真夏の日だった。

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「ロッキー山脈を越えてどこまでいけば背後に見えなくなるのか、それだけを知りたくてロッキーを西から東に越えた」――普通のことのような口調で言う男をなんと気障なのだろうと彼女は思った。が、オートバイによる旅の経験を重ねるなかで、彼女はかつて気障だと思ったあの男性に、ひそかに敬意を表するまでになっていた。

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・『コーヒーもう一杯』(角川文庫/1980年)より4作品

数年まえの、盛夏。友人がチャーターしたヨットに乗せてもらい、夏の瀬戸内海を楽しんだ。白石島という小さな島に立ち寄ったとき、ぼくは、久しく忘れていたものを、なぜだかたいへんな衝撃をともないつつ思い出していた。島が持っているある種の感じが、遠い記憶のようなものを、少しずつ呼びさましつつあった。

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ぼくは、この文章にまだタイトルをつけていないことを思い出した。あまり凝ったタイトルにはせずに、簡単なものにしておきたいなと思ったとたんに、「辞書とポパイと——」と、ほんとうに簡単なのがうかんできた。辞書とポパイと、そしてもうひとつなにを持ってくるか書きながら考えていたら——。

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マスタングの大量市販車の最初のモデルが売り出されたのは、一九六四年のことだ。マスタングは非常によく売れ、フォードの大ヒットになった。この時代になってやっと、自動車を大量に売る相手としてしっかり想定できるようになったマーケットが欲しがっていたイメージを、リー・アイアコッカーのフォードは提供したのだ。

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「私、明日、誕生日なのよ」「いくつになるんだ」「十九」「お祝いをしなきゃ。哲雄がいなくて残念だな」「そうねえ」「海を見にいこう」「どこの?」「外房だな」「わ、素敵」「俺のオートバイと哲雄の車と、どっちがいい」「車」——。ふたりは、部屋を出た。正彦と哲雄の部屋は二階にある。ふたりは階段を降りた。

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2022年3月11日 00:05 | 電子化計画

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