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評論・エッセイ

ロッキー山脈を越えて、ふとふりかえる。どこまでいけば、背後に山は見えなくなるのか。それだけを確認するための旅。

「ロッキー山脈を越えてどこまでいけば背後に見えなくなるのか、それだけを知りたくてロッキーを西から東に越えた」――普通のことのような口調で言う男をなんと気障なのだろうと彼女は思った。が、オートバイによる旅の経験を重ねるなかで、彼女はかつて気障だと思ったあの男性に、ひそかに敬意を表するまでになっていた。

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『彼の後輪が滑った』太田出版 一九九六年

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