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書評エッセイ『水平線のファイル・ボックス 読書編』より7作品を公開

書評エッセイ『水平線のファイル・ボックス 読書編』(光文社/1991年)所収の7作品を本日公開いたしました。

 小田急線の経堂の駅から歩いて7、8分、線路のすぐそばに、植草さんの自宅がかつてあり、この家の奥の部屋に植草さんの書斎があった。この家を訪ねたある日、植草さんが長い間続けてきた評論的な著作活動の基本的な原動力を、僕は小さなひと粒の結晶のように、目のまえに見た。文芸や美術や音楽などに関して、植草さんが強い知的好奇心を抱いていたことは、多くの人が知っている。ばらばらに届いてくる情報を選択し吟味しつつ、実は植草さんは自分の中でなにごとかの体系を作ろうとしていた。

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 主人公で48歳になるヴィック・ホーリーフィールドは、テキサス州の億万長者だ。彼が1957年に卒業したロング・アイランドのハイスクールが廃校になると知り、彼は母校であるそのハイスクールのすべてを自分ひとりで買い取り、当時の状態を再現する。そして同じ年度の卒業生全員に、学校にもう一度集まりそこで1年を一緒に過ごそうと手紙を出す。さて、ここからどのような物語がはじまるのだろうか、と誰しもが思うはずの不思議な設定の小説が、『ヴィック・ホーリーフィールドと1957年度卒業生たち』だ。

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 レイノルズ・プライス(1933〜2011、アメリカの作家)を僕は知らなかったけれど、長編小説をいくつか書いていて、そのうちの何点かは相当な評判になったらしい。『愛と仕事』というタイトルの本は、150ページのペーパーバックで、表紙のデザインは、平凡だがそれほど悪くはない。と言うよりも、なかなか思わせぶりではないか。だから僕はこれを読んでみた。不思議な物語だった。

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 『私の愛情の対象』はスティーヴン・マコーレーという作家の最初の長編だそうだ。表紙の絵がよく出来ている。読み終えてからもう一度よく見ると、この表紙絵は作品の内容を巧みに象徴していることに気づく。この小説には、アメリカ人として生きていくにあたって、欠かすことの出来ない重要な要素がいくつかある。順位はつけがたいが、ファミリーの形成と維持はアメリカ的な意味において、たいへんに重要だ。家庭や夫婦は、ありとあらゆる仕事に優先すると言いきっていいまでに、重要なものだ。その重要な夫婦や家庭、家族の関係には、アメリカ的な理想主義が濃く影を落としている。

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 ぜひ読みたいと思いつつ、いつのまにか10年、15年と時間だけ経過してしまい、読まないままになっている本というものが、心のなかを捜せば何冊もあるはずだ。そのうちの一冊、グレイス・メタリアスの『ペイトン・プレイス』を、僕はついに読もうとしている。『ペイトン・プレイス』は僕がまだ十代の子供だった頃、アメリカでたいへんなベスト・セラーになった長編小説だ。1950年代のアメリカの、人口4,000人に満たない小さな町での人々の生活の、表側と裏側とを描いた小説だという。アメリカの小説によくある、伝統的なテーマの取り方だ。

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 いま僕の目の前に6冊のペーパーバックがある。読み始めて面白くないから途中でやめたもの、あるいは、読み通しはしたものの、読んだことをうれしい気持ちで全面的に肯定することの出来ない6冊だ。少なくとも僕にとっては読む必要のさほどないこのような本を、僕はなぜ読んだのだろうか。解答は簡単だ。読みたい、と思って僕はいつも待ちかまえているからだ。その僕を、それぞれの本に印刷している宣伝文句が、見事に引っかけた。

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 マイケル・チャボンの第1作『ピッツバーグのミステリー』という小説は不思議な小説だった。不思議な小説、という言い方の中には、書きかたがまったく僕の好みではない、というような意味も含まれる。あるひとりの大学生が、学校を卒業した年のひと夏に体験したさまざまなことがらが、夢の中の出来事のように、ファンタジー的に描かれていた。因果関係がはっきりしないままに、なにがどうなっていくのかもよくは説明されないまま、いろんな断片が現れては消え、消えては現れつ、ファンタジーは展開していた。

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2023年5月30日 00:00 | 電子化計画

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