VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

お知らせ

エッセイ『本を読む人──片岡義男エッセイ・コレクション』より9作品を公開

エッセイ『本を読む人──片岡義男エッセイ・コレクション』(太田出版/1995年)より9作品を本日公開いたしました。

アメリカではあらゆる夢が現実になる場所として、カリフォルニアを肯定的にとらえる立場がある。しかし、「明るいカリフォルニア」の裏へ回れば、否定的な捉え方はいくらでもある。カリフォルニアはどんづまりだと認識すると、少なくともカリフォルニアの本質的な面白さは、よりいっそうディテール鮮明に、見えてくるはずだ。否定的な、負の、ネガティヴなエネルギーの集まる場所としてのカリフォルニアが、小説的なリアリティとして作品に実った最近の例をひとつだけ挙げるなら、それはケム・ナンの『源にふれろ』だ。

こちらからお読みいただけます

ニール・サイモン脚本による映画に基づくペーパーバック小説は、西へむかう新幹線によく似合う。あの強引なスピードに全てを任せてしまい、せっかくの窓の外も見ずに読みふける活字の世界として、軽快で楽しく、適当に知的で、たいへんにいい。冬の間に雪の北国へむかう新幹線にぜひ乗ろうと思ったぼくは、ニール・サイモンのコメディ戯曲集を二冊、買った。『ザ・コメディ・オブ・ニール・サイモン』『ニール・サイモン戯曲集』の二冊だ。北国へむかう新幹線、そして温泉宿でなおも読む。完璧に日本的な舞台設定のなかで、極めてアメリカ的な世界にひたるという、一種のスキゾフレニック(分裂症)状況に自ら入りこむわけで、ニール・サイモンの世界には似つかわしい。

こちらからお読みいただけます

トム・ロビンズの『カウガール・ブルース』は、核心となるべき、鋭いピンで刺した一点のようなところから書き始め、三百六十度さまざまな方向に向けて世界観を自在に披露しつつ、女主人公の物語も運んでみせるという、アメリカ小説にはよくある手法だ。親指が人なみはずれて大きくなるように生まれついた、才覚のある美しい女性を主人公に据えた、70年代の前半くらいまでのアメリカ的に陽気で肯定的な変化に富んだ、しかも成功的な有為転変の物語だ。ややマッチョな冗談に満ちた饒舌体による短い章を僕はたいへん楽しく読んだ。

こちらからお読みいただけます

詩人であり音楽家でもあるロッド・マッケンの詩集を、かつてぼくは一冊だけ翻訳したことがある。『アローン』(邦題は『ひとり』)だ。英語で書かれてある彼の詩と、それを目で読んで理解するぼくの頭の内部での出来事と、日本語で紙の上に作り直されていく彼の詩との三者を結ぶ三角関係は、ぼくにとってはたいへんに快適な緊張をはらんでいた。『アローン』におさめてあった詩は、タイトルが示している通り、孤独がテーマだ。ロッドの詩はアメリカでは広い層に数多く読まれているが、彼が本当の孤独というものを知っていることだけは確かだ。

こちらからお読みいただけます

いい短編小説に出会うのは、記念すべき楽しい出来事だ。このうれしい出来事は、読む短編の数に比例するのだろうか、それとも、必ずしも比例しないのだろうか。記憶に残るいくつもの短編小説は、経過していく時間のなかでの重要な標識のようだ。ただ、アンソロジーを読む際は、すくなくとも半分に関しては、自分の理解は隅々までおよばず、したがってよく理解出来ず、楽しめないのは当然なのだと思っておくのが正しい態度だ。たったひとつの素晴らしい出来栄えの作品に出会うだけで、そのアンソロジーを全部読みとおす価値がある。

こちらからお読みいただけます

エミリー・リストフィールドの『すこしだけ他人のように』という小説タイトルは、大部分はすでに他人ではないのだ、という意味を暗示するのだろうか。物語のはじまりと終わりとでは、主人公のふたりは、ほんのすこしだが確実に、どちらも変化している。ファミリーがひとつ、新たに出来ていきはじめるときの、いちばん発端の部分を、作者はディテール豊かに、それゆえにやや退屈に、描いている。

こちらからお読みいただけます

英語でビーチェズ(ビーチ、海岸の複数形)というタイトルを持った長編小説は、それだけでかなりの魅力を発揮する。聖域としての海、そして海岸が、主題のための背景となっているのだろうか。あるいは、いくつかの海岸とは、ひょっとしたら、比喩としての巨大な砂時計かもしれない。その砂時計がすべて落ちきったときに、主人公たちのドラマもまた終結する、などと想像すると期待は高まる。アイリス・ライナー・ダートの『いくつかの海岸』という長編小説をぼくは読んでみた。

こちらからお読みいただけます

アン・バークの『ラーフ・ラインズ』は、大学生の頃から現在にいたるまで、ずっと親友どうしの関係を続けて来た三人の女性たちの物語だ。かつては若かった彼女たちも、今は人生の折り返し地点に来ている。それぞれがかなり深刻な問題を抱えているが、それぞれに希望を見出し人生を折り返していく。だが、そのうちのひとりが事故で急死してしまう。全く不条理な出来事だが、現実の問題としては受け入れざるを得ない出来事だ。

こちらからお読みいただけます

ジェシカ・サヴィッチは、1970年代終盤から80年代序盤にかけて、NBCによる全国ネットのTVニュース番組などで広くその存在を知られた女性だ。当時のニュース番組は基本的に男性の世界だった。『ゴールデン・ガール』そして『オールモースト・ゴールデン』という題名の2冊の彼女の伝記を読むと、現実はそのままホラー・ストーリーだ、という感銘を受ける。ジェシカが自分の一生として持ったホラー・ストーリーの発端は、幼児の頃の父親との関係のなかにあった。

こちらからお読みいただけます

2022年7月26日 00:00 | 電子化計画

このエントリーをはてなブックマークに追加