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評論・エッセイ

ワシントン・ハイツの追憶

 一九五〇年代なかばから持っているジャズのLPを必要があって見直していたら、ラルフ・フラナガンのLPジャケットのなかに、一枚の写真が入っているのを見つけた。週刊誌ほどの大きさの白黒のプリントで、ワシントン・ハイツのおよそ南半分を空中からとらえたものだ。裏には鉛筆で一九五八年と書いてある。当時のワシントン・ハイツに住んでいた知人からもらったものだ、ということはすぐに思い出すことが出来た。LPジャケットのなかに入れたまま、長いあいだ忘れていた。僕にはよくあることだ。
 ワシントン・ハイツは米軍の施設だった。現在にあてはめてご…

底本:『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年