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佐藤秀明さん、お帰りなさい!

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 20日間『ロンサム・カウボーイふたたび』の旅を終え、写真家・佐藤秀明さんが無事帰ってきました。スタッフ一同、真っ先にその興奮に触れたいと、ボイジャーに立ち寄られた佐藤秀明さんにカメラを廻しました。興味尽きないお話はいずれたっぷりお伝えしますけれど、まずは、帰られたその熱気を一報いたします。
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佐藤秀明(以下、佐藤) 昨日までは帰ってきた勢いで元気でしたけど、今日はなんだかふらふらしています。とにかく運転するのが大変でしたね。田舎はいいんだけど、ロスは怖かった。だって、片側7車線ぐらいの道路に車が津波みたいに来る。そういうハイウェイが縦横に走っているんですから。

ボイジャー木村智也(以下、木村) WiFi、途中問題なかったですか?

佐藤 ありませんでした。

木村 よかったです。

佐藤 ただ、ときどき電波が弱くなりますね。

 30年前に行ったバーがそのまま残っていたんです。だけど夜なのにネオンがついていないし、閉まっている。閉店しちゃったのかなと思って、別のバーに行きましたよ。そこの若いバーテンに僕が撮った30年前の写真を見せたら「ここのバーは僕のおばあちゃんがやっている」と言うんです。
 すぐに電話をかけてくれたら、おばあちゃんがやってきて、バーをオープンしてくれました。だけど、中は昔とは変わってしまってたね。カウンターも昔はほんとに良かったんだけど……スロットマシンがあって。今はスロットマシンがレバーではなくて、ボタン。それがバーのカウンターに組み込まれている。だから、みんな酒を飲みながら暗く黙ってやっているんです。

プロデューサー萩野正昭(以下、萩野) なんとなく、わいわいやるって言うのが重要ですよね。

佐藤 そうですね。30年前に撮った僕の写真を見せたら、そこに写ってる人が二人ばかりまだ生きていることがわかりました。

萩野 来たのですか?

佐藤 いや来ませんでした。私と同じいい歳だからネ。

萩野 この人はまだ生きているとか言って、

佐藤 ええ、大騒ぎになってしまって、次から次へあちこち電話を入れたりして、わいわいやりました。

萩野 インスタグラムで送られた、バーのカウンターの写真見ましたけど、おごってもらって飲み過ぎちゃったというコメントがありましたよね。

October 14, 2017 at 1255PM

■インスタグラムより

佐藤 ええ、飲め飲めってバーボンがじゃんじゃん出てくる。スコッチはないんですよ。スコッチくれって言ったら、ないよ……ここをどこだと思っているんだと言われました(笑)。
 何杯ぐらい飲まされたかな? ふらふらになって帰りましたよ。そこは標高が2500mくらいあるところでね。

 一番走ったのは、貨物列車を追いかけて右へ左へと走り回った時。あれは、走り回ったナ。撮影にいいポイントを見つけて、先回りして、列車が走ってくるのを待つんです。ところが来た列車が意外と短かったりする。がっかりして、撮り直し。やっと、2キロ程ある長い長い列車を見つけました。

萩野 道はそんなに変わってないでしょう?

佐藤 綺麗になりましたね。だけど、町は逆に寂れてきてますよ。昔は、たくさん人がいた……バーにも酒場にも人がいたのに、今はどこも閑古鳥が鳴いてますね。

萩野 すっぽ抜けちゃうのかな?

佐藤 片岡さんには、撮ってきた写真を見てもらいたいですね。特に最後の方に撮ったサーフィンと海のものを。
 マイク・パーパスというサーファーは、1960年代のヒーローなんですよ。
 彼と一緒に、ハップ・ジェイコブスという、サーフボード作りの神様に会いました。彼が90歳で生きていると聞いて、是非写真を撮りたいと思いました。週に3日ぐらいしか働かないと聞いたので、無理かもしれないと思っていたのですが、たまたまその日は注文が入っていて、ボードをつくっているところを撮れました。
 あの人のところにはいろんなメディアが取材にくる。日本からも。でもね、メジャーで測ったりして作っているところは撮らせないんですよ。せいぜい、ボードを持っているところだけです。ところが今回は全部詳しく撮らせてくれました。

萩野 それは、貴重ですね。

佐藤 昔、湘南で加山雄三たちが波乗りしていた板はジェイコブスみたいですね。今の若い人たちは知らないだろうけど、あの頃、サーフィンを始めた人たちはジェイコブスというと目が点になっていましたよ。

 西海岸の海辺には古い昔からのピアがある。ピアに遊園地があったりします。それがなかなか古風で良いんですよ。

萩野 サンタモニカのピアですね、あそこには遊園地がありました。よく知ってます。あのピアの近くにボイジャーがあったんです。

EPSON MFP image■かつてのサンタモニカ。ボイジャーのオフィスがあった

佐藤 行きましたよ。サンタモニカのピアも。
 それから、片岡さんの書かれたものに使えそうな雰囲気の所を探して歩きました。それが結構楽しかったな。窓側からみた、室内のちょっとした風景。日が当たっていて、というような。

萩野 片岡さんの文章と佐藤さんが思い浮かべたイメージをくっつけてやってみたいですよね。

佐藤 ええ

萩野 片岡さんは佐藤さんの思うとおりにやってもらいたいと言ってました。

佐藤 思うとおりにやってきました。でも思うとおりにと言ってもね、常に片岡さんがこの辺にいるんだよ。

萩野 いろんなご苦労があったと思いますが、以前と比べて印象に残ったことはありましたか?

佐藤 まずレンタカーを借りるシステムそのものが、昔とはぜんぜん違うんですね。一つの大きなビルの中にレンタカー会社がすべてはいっている。そのビルはラスベガスの飛行場から20分も離れたところにあって、専用バスで行きます。そこで、手続きするでしょう……そうしたら日本の免許証が必要なんですよ、国際免許だと。日本の免許証を出せって言われたんだけど、無いんだ。

木村 えー!

佐藤 真っ青になりました。相手は書類をボンって投げ返すわけ。
 これは冷静になってこれから先のことを考えなければと思い、離れたところで、もう一度確認したら、定期入れから落ちたのか、カバンの底の方に免許証がありました。
 それで、なんとか車を借りることができましたけど、システム化というか省力化がすごいですね。手続きしたら、車はビルの中の三階のAセクションにあるから、好きな車に乗れと言われました。Aセクションに行くと、同じランクの車がズラーッとならんでいる。自分で勝手に選ぶのです。

萩野 昔は選んだ車を運んできてくれましたよね。あるいは何番の駐車場へ行けとか

佐藤 並んでいるどの車にも鍵が座席に置いてある。これでいいのかな? と戸惑いましたし、ちょっと不安だったな。結局、トヨタ車にしましたけど。

萩野 確かに行く度にシステムが変わっていて、なんとなく胡散臭かったですよ。合理的にはなっているようだけど、冷たくて……ますますそうなってしまったんですね。

佐藤 大きなナビを貸してくれるんです。
 おまえどこから来た? 日本か? と聞かれてね。日本語にしてくれる。スイッチを入れれば、もう後はどこ行っても大丈夫だと。ところが、ラスベガスではハイウェイが縦横に走っていますから、一つ間違えると全然わからなくなってパニックになるわけ。
 運転している途中だし、えーい、うるさい、とナビのスイッチを切りました。お借りしたWiFiルータで、自分のモバイルで見る方がよっぽど簡単でわかりやすかった。今、自分はどこにいるのかもわかりますし。

萩野 それは、話を聞いているだけでも、大変だ。

佐藤 着いた日のホテルは飛行場のすぐ脇にあるということは、地図上ではわかったけど、そこに行くのが大変だったな。

萩野 見えるのにね。

佐藤 飛行場を何回もぐるぐると。

木村 地図上ではすごく近いのにたどり着かない。

佐藤 明日からいやだなーと思いながら。
 翌日またハイウェイに乗るでしょ。朝のラッシュ時だからすごいんです。津波のように車が走ってくる。それを抜けて、田舎道にスッと入ったときには、ほっとして、胃がシクシクシクシク。

萩野 東京からサンフランシスコへ飛んで、ラスベガスにその日に入ったんですか?

佐藤 入りました。

萩野 それで、そこで泊まって。

佐藤 そうです。
 ラスベガスはすごかったけれど、さらにすごかったのはロスでしたね。一回ロスを走っちゃえば、ラスベガスなんてなんでもない。
 ロサンゼルスのハイウェイを狂った様に走るというのは、すごいなと思いました。

萩野 今は、もう自信ないナ。

佐藤 僕ももういっぺんは、嫌ですよ。
 サンタモニカの方に行ってモーテルに入って、付近でレンタカーを借りる。そしてその近くをウロウロするのは、どうってことない。ダウンタウンの方にも行きましたよ。ダウンタウンに行くのに3時間掛かったことがある。道が混んでいて。

萩野 道は渋滞もあるわけですね。

佐藤 渋滞です。すごい渋滞。

萩野 半端な数じゃないですからね。

佐藤 いや、久しぶりに面白かった。
 一時は、ロスあたりを車をぶっ飛ばしていると、このままみんなと会えるのかな~~と?(笑)

萩野 申し訳ない。

佐藤 全然違う世界ですね。でも田舎へ行けば、田舎でも飛ばすんですよ。140から150キロ。

木村 そんなにですか?

佐藤 そう。だから、100キロくらいでなるべくトロトロと走るようにしていました。昼間でもみんな電気をつけて走っていて、遙か彼方に、明かりが見えると、みるみる近づいてくるんだから。
スティーヴン・スピルバーグの「激突」という映画があったでしょう。ああいうでかいトラックが来たら、おっかなくてしょうがない。

萩野 だって来るでしょう?

佐藤 来ます。

萩野 煽られたら大変ですね。

木村 それは怖いですね。

佐藤 でもマナーはいいですね。僕が歩いていて交差点でキョロキョロして、まだどっちに行くか決めてないとします。けれども、四方向から走って来た車はピターッと止まって、僕がどうするのかを理解したとき、初めて動き出す。これは、感動しましたよ。やっぱり、車の社会だよね。ハイウェイでも、ウィンカーを出したら、後ろは必ず入れてくれます。
 刺激がいろいろありましたね。帰ってきてからはぼーっとしています。

萩野 少し休んでもらわないと。

佐藤 ええ。

木村 お疲れ様でした。ゆっくり休んでください。

萩野 また、連絡取り合いましょう。

佐藤 是非おねがいします。じゃ失礼します。


誰にだって思い出の風景がある。


『ロンサム・カウボーイふたたび』
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2017年11月2日
株式会社ボイジャーにて

 


2017年11月5日 00:30