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エッセイ『すでに遥か彼方』より7作品を公開

エッセイ『すでに遥か彼方』(角川文庫/1985年)より7作品を本日公開いたしました。

[本日公開のエッセイを読む際には、まずこの「あとがき」をお読みください]
たいていのエッセイは依頼の電話で始まる。短くて400文字、長いもので4000文字ほどの、物語ではない内容の文章を業界でエッセイと総称している。一週間にひとつのエッセイを書いていると、一年間では五〇篇のエッセイを書くことになる。五〇篇もあれば、書いた日の日付をそえて、書いた順番にならべてたとえば本書のような文庫本にすると、できあがった本は一見したところ日記のようになるのではないだろうかというアイディアの提供をうけてできたのが、本書『すでに遥か彼方』だ。

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ぼくがザ・ビートルズを初めて聴いたのはLP『プリーズ・プリーズ・ミー』が出た頃で、曲は『トゥイスト・アンド・シャウト』を聞いたのではないか。最初に持った印象は、アメリカのヒット曲をうたいなおすイギリスのグループだ、というものだ。イギリス訛りの英語はかなり奇妙に聞こえたが、演奏や歌いかた全体にある、彼ら独特のチャーム(愛嬌)はなかなかのものだった。写真やニュースで見るビートルズは、LPを通して受ける印象と同じく、愛嬌に満ちていた。四人でインタヴューを受けているときの彼らの表情や体の動きは愛嬌そのものだったし、彼らが喋ることがらは、ウイットとユーモアの好サンプルだった。

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ローレンス・カスダン脚本・監督による1983年の映画『再開の時』。非常によく出来たこの映画は、よく出来た映画がいつもそうであるように、面白い点をいくつも持っている。そのいくつもの面白い点のうち、順番としてもっとも大事なのは、脚本と監督とを担当したローレンス・カスダンが、シナリオによってひとつの世界を成立させてみようというアイディアから出発していることだ。その面白さは、設定とダイアローグの積み重ねで一つの世界を作り上げたシナリオの見事さにある。特に英語の台詞は、たとえばなんのためにあるのか見当もつかないような馬鹿げた台詞がひと言も存在しない事実を知って、爽快な気分になることが可能だ。

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彼女が指定したコーヒー・ショップは板張りの感触のいいフロアがあり、店のなかはコーヒーの香りに満ち、クールにスイングするピアノ・トリオのジャズが、静かに心地よく聴こえていた。週末金曜日の約束が、彼女の出張でキャンセルとなったぼくは、さっそく別の彼女から取り付けたデートの約束を、今度は自分が急な出張だなどとでたらめを言って取り消す。しかも先の彼女の言葉をそのまま使って……。

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女性の名前の店名に惹かれ、通りすがりにふと入った懐かしい典型的な造りのバー。店の名前に思い出はないが、そこで出会ったホステスは、偶然にもお店と同じ名前だった。グラスのドライ・ジンが三分の一以下になってきた頃、バーから電話をする。電話に出た彼女の名前もまた、裕子だ。タクシーで彼女のマンションに向かったぼくは裕子さんの部屋に入る。……しかし、これもまたフィクションなのだ。

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ぼくは早稲田大学の法学部を四年で卒業した。中の下くらいの、ごく平凡な成績だった。ぼくたちは冗談にあるいはゲームとして、四年で卒業していた。ただし、取得単位数のつじつまあわせは、たいへんだった。その大学でぼくがすごした四年間は、自分はなにをしていればもっとも幸せであるのかをみつけようとしている時期であり、したがって自分自身の生活はきわめてあいまいだった。今になってふりかえってみると、記憶の中心にいまでもやさしく存在しているのは、四年間という時間のなかでつきあった何人かの女性たちだ。よみがえる、と言うほど昔の出来事ではないのだが。

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雑誌のページをくっていくと、マーボロ・カウボーイがいる。アメリカの煙草マーボロが、すでにかなり長い期間にわたって展開してきた一連の広告写真シリーズのなかの、カウボーイたちだ。実際のワーキング・カウボーイをイメージしていて、それはかなりのところまで成功しているが、美化され様式化されたカウボーイ・イメージであることに間違いはない。その写真も、ぼくは好きだ。支持者たちは数多く、しかも広い層におよんでいるのではないだろうか。その源流の大きなひとつは、かつてハリウッドがたくさんつくり出したB級ウエスタンだろう。B級ウエスタンがもしなかったならば、イメージとしてのカウボーイは、これほどまでには普及していないのではないだろうか。

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2022年10月4日 00:00 | 電子化計画

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