短編集『豆大福と珈琲』（朝日新聞出版／2016年）からの１作品を本日公開しました。

　生まれて初めて食べる豆大福。今、目の前の皿の上にある豆大福が、いかに美しく静かな佇まいなのか、そしてその味が実に完璧であり、自身の心身がいかに幸福感に包まれたかを延々と語るのは、三十四歳の翻訳家・森野真彦。心が和やかに優しく満ち足りた状態となった彼は、そこでひとつの閃きを得る。そもそもなぜ豆大福が彼の手元にあるのか、閃きとは何なのか。時間を遡り、祖父母から三代にわたる彼の家族と家をめぐる物語が語られていく。そして今、彼が下したひとつの決断とは。

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