VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

お知らせ

エッセイ『自分を語るアメリカ──片岡義男エッセイ・コレクション』より12作品を公開

エッセイ『自分を語るアメリカ──片岡義男エッセイ・コレクション』(太田出版/1995年)より12作品を本日公開いたしました。

カウボーイ・ブーツの生産の中心地は昔からテキサスであり、今でも特産品と言ってよい。アメリカがどんなに落ちぶれても、このカウボーイふうのファッションだけはいつまでも続いていきそうに思える。このカウボーイ・ファッションのなかで足元を決めるブーツはとても大事だ。ブーツは白人のカウボーイたちによって乗馬に適するよう様々な改良が加えられた。彼らは自分たちを木こりや農夫とは違う特別な存在と考えていたようで、そうした自負もしくはダンディズムのようなものが端的に表れたのがブーツなのだろう。

こちらからお読みいただけます

生活の中でいつも目にしたり使ったりしているものでありながら、呼び名は知らない、というものは思いのほかたくさんあるに違いない。片岡義男は子供のころ、日常的なものの日本語による呼び名をよく知らなかったという。英語では知っていてもいざ日本語で言おうとすると呼び名がわからず、その「もの」はよく知っていても呼び名はわからないという奇妙に面白い状態に非常にしばしば陥ったという。例えば固定電話の受話器受けの部分についている2つの突起。あるいは歯ブラシの刷毛の部分。ペーパー・クリップの各部の名前。『ホワッツ・ホワット』という辞典は、こうした名前をたちどころに知ることができる。

こちらからお読みいただけます

『カサブランカ』はハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンの映画だ。彼らを抜きには考えられないが、しかし、あのふたりの役を最初にオファーされたのは、ロナルド・レーガンとアン・シェリダンだった。もし彼らが演じていたら、『カサブランカ』は名画になっただろうか。『タクシー・ドライヴァー』はロバート・デ・ニーロ主演の映画だが、実は最初にシナリオが送られたのはエルヴィス・プレスリーだった。こうした例は枚挙にいとまがないが、俳優は演技の能力だけでなく、自身が持っているすべてを動員して役にあたるわけだから、その人にしかないものが重要になってくる。そう考えると、やがてひとつの感銘のようなものにたどり着く。

こちらからお読みいただけます

ミッキー・マウスが誕生したのは1928年。この年から少なくとも1960年代までのアメリカで育った普通の少年たちは、ほとんど必ずミッキー・マウスのコミック・ブックやおもちゃに熱中した体験を持っているはずだ。ディズニーのキャラクターを収集することに中毒的に熱中している人々(マウス・ジャンキー)の活動が注意を引くようになったのは1960年代半ばから。この時代、アメリカは激動の時代だった。その中で過去のアメリカを振り返るノスタルジアのブームが起こり、マウス・ジャンキーたちが中毒している対象であるコレクティブルズにも新たな視点が向けられるようになった。

こちらからお読みいただけます

デイヴィッド・ロンゲストによる『キャラクター玩具とコレクティブルズ』の冒頭には、キャラクター玩具の中核を形作ってきたコミックスのキャラクターの歴史が手短に書かれている。それによれば、新聞の日曜版に連載されたコミックス・セッションがアメリカの人々に大変に好かれ、19世紀から現在までその愛情関係は続いていると言う。それは、民主主義の展開とエンタテインメントの大人的発達との関係に位置付けるべき出来事なのだ。

こちらからお読みいただけます

アメリカの多くの一般的な広告の中で、猫が重要な役を果たしていた時代というものが確実にある。1880年代から1950年代半ばあたりまでの時代だ。当時一般的なコミュニケーションの形は印刷媒体であった。そしてその印刷媒体に、猫たちは描かれ、頻繁に登場していた。広告は人の目にとまらなければ、なんにもならない。どうしたら人の目にとまりやすいか、広告の中に何を用いたら目にとまりやすくなるのか、試行錯誤した結果、猫というきわめて有効なアイ・キャッチャーを、昔の広告人は手に入れた。猫は、絵の素材として可能性に満ちている、そして奥行きが深い。

こちらからお読みいただけます

雑誌『ニューヨーカー』が、毎号、僕の手もとに届く。アメリカの一般的な雑誌の表紙には、クリスマスを除いて季節感はほとんど登場しないが、『ニューヨーカー』の表紙には季節感がはっきりとあって楽しい。この表紙とともに楽しいのがカートゥーンだ。『ニューヨーカー』的にユーモアの内容や方向が揃えてある。何年も読んでいると、ひいきのカートゥーニストが何人かできてくる。そのひとりに、ロズ・チャストがいる。今の自分たちの状況を解きほぐし、その本質を見せると同時に、そのことによって自分たちを笑わせてもくれるという、カートゥーンの王道をロズ・チャストは守っている。

こちらからお読みいただけます

アメリカン・コミックスの元祖は日曜日の新聞掲載の連載マンガだ。読み切りのギャグものからストーリーものまでいろんな種類があった。1933年、新聞連載マンガをまとめたコミック・ブックスが景品用として製作され人気となった。これに目をつけた男が自分が製作した本に10セントの値段を貼りつけてニューズ・スタンドに置くと、あくる日には売り切れていた。これがきっかけで『フェーマス・ファニーズ』という月刊のコミック・ブックスが刊行された。1938年にはスーパーマンが誕生し、アメリカン・コミックスの大成長が始まった。しかし戦後、スーパー・ヒーロー人気は陰りを見せ、そこに入ってきたのがSFや怪奇ファンタジーだった。

こちらからお読みいただけます

イタリアは19世紀半ばに国として統一されたが、内紛や外国からの侵略に終止符を打つには、強い国になる必要があった。ローマから北に70マイル、テルニという町のロイアル・アームズ・ワークスで1891年に生まれたマンリカー・カルカノ91と呼ばれる6連発ライフルは、全体として非常に優秀な出来上がりのライフルであった。イタリア軍に採用され第二次大戦まで大量に使用されるが、1945年、戦争が終わりライフルが次々と返納された。その中に「C2766」と刻印された1丁もあった。『ザ・ガン ジョン・F・ケネディを殺した銃の伝記』は、1丁のライフルが辿った歴史を、事実の側から一貫して書いている、非常に面白いノンフィクションだ。

こちらからお読みいただけます

「ノスタルジア」シリーズはエース・ブックスによるペーパーバックの叢書だ。この中の1冊『偉大なる西部劇スターたち』は西部劇の主演スター25人を取り上げている。その中でぼくがもっとも興味があったのは、かつてスクリーンで何度か見て、西部劇に主演する男というもののイメージを解き放ってくれた俳優オーディー・マーフィーだ。それは、西部劇を面白がるということの面白くなさに、目覚めつつあった時期とも重なる。彼は陸軍軍人として第二次世界大戦で最も多くの勲章を授けられた兵士でもあった。

こちらからお読みいただけます

アメリカ・ペンシルバニア州の町、ミル・ランを流れる清流ベア・ラン。小さな滝が多いこの川の上に突き出すように、フォーリングウォーター(落水荘)は建てられている。ピッツバーグで富を成したエドガー・カウフマンが、自身の別荘としてフランク・ロイド・ライトに依頼し1936年に建てられた別荘で、20世紀の最も重要な建物と言われている。そこにはライトの信念が具現化されている。

こちらからお読みいただけます

アメリカでのケーブル・カーは、サンフランシスコで始まった。いま残っているのも、サンフランシスコだけだ。ケーブル・カーは、乗るのも見るのも楽しい。急な坂を登っていくところ、あるいは降りていくところを真横から見ると、車体のなかやオープン・デッキに立っている人はその斜めの坂にさからって、垂直に立っている。また、坂を下って来たケーブル・カーがカーヴを曲がるときは、何とも言えない独特な動きを見せてくれる。ケーブル・カーの運行に関わる機械的な仕掛けは、機械を得意とはしていない人たちにもよくわかって、面白い。いったんそのメカニズム全体がのみこめると、ケーブル・カーに対する愛着は、深くそして強くなるようだ。

こちらからお読みいただけます

2022年7月12日 00:00 | 電子化計画

このエントリーをはてなブックマークに追加