VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

これが天使の町だって?

 ロサンゼルス空港を飛び立った飛行機が、高度をあげていった。主翼のすぐ前の窓際にすわって、窓の外を見ていた。ぴかぴかにみがかれた主翼が、冬の午後の太陽をうけとめて光り、まぶしかった。
 眼下に、ロサンゼルスの町が広がっていた。おおむねまったいらな土地いっぱいに、無数の建物と道路が、びっしりとつめこまれているのが見渡せた。光線の加減なのか、なぜかあらゆる建物が一様に淡い褐色に見えた。
 飛行機が、さらに高度をあげた。見渡している下界の広さが、そのぶん広くなっていった。道路に自動車が走っているのが見えた。小さな…

底本:『アップル・サイダーと彼女』角川文庫 1979年

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