VOYAGER

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書評

マンハッタンの10番通りと14番通り

 自分にとっていちばん好きな場所はニューヨーク、特にマンハッタンだ、といつも言っていたアメリカ人の友人の持論は、ニューヨークはアメリカのなかの独立国だ、というのだった。
 どんな人のどのような視点や興味からニューヨークをながめても、そこにはほとんど底なしに近い刺激に満ちた世界がかならずある、とその友人は言っていた。したがってニューヨークほど面白いところはなく、これほどに面白い場所は独立国と呼ぶのがもっとも似つかわしいと、こうなるわけだ。
 きみはニューヨークが好きか、とその友人にきかれて、好きだ、とぼくはこ…

底本:『ブックストアで待ちあわせ』新潮文庫 1987年

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