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評論・エッセイ

自分の意味が消えるとき

 空を眺めることをなぜ僕が好いているか、その理由をひと言で表現するなら、空を見るとそのたびに、自分というものの意味があっけなく消えてしまうからだ。
 空は圧倒的だ。すさまじい。とてもかなわない。しかも、人間の力も存在など、これっぽっちも前提としていないから、空はなおさら素晴らしい。これほどに素敵なものはない。
 そのような空を、ある日の僕が眺めるということは、空に自分を対比してみることだ。対比したとたん、自分という意味を持った存在など、音もなく消えてしまう。これは、爽快だ。気分がいい。この気分は、何度くりか…

底本:『昼月の幸福──エッセイ41篇に写真を添えて』晶文社 1995年

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