今日は海岸で雲を見る
目が覚めてベッドを出る。窓を開く。外を見る。そのとたん、よし、今日は雲を見よう、と決定する日が、ひと月のうちに一度はかならずある。雲を見ること。それは僕の趣味のひとつだ。
僕の好みの雲が出ている日は、体験によって正確に知ることが出来る。科学的にさえ、きちんと予測出来る。そして雲を見るための場所が、僕にはいくつもある。そのうちのひとつへ、僕はひとりで出かけていく。都心から特急電車に二時間も乗れば、雲を見るための好みの場所のひとつへ、簡単に到達することが出来る。
大きな三日月のかたちをした海岸をすぐ下に見…
底本:『昼月の幸福──エッセイ41篇に写真を添えて』晶文社 1995年
前の作品へ
次の作品へ