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評論・エッセイ

雨の午後、コーヒー・ショップで

雨の午後、コーヒー・ショップで

 いまは雨の日の午後だ。五月の終りちかい。春のおしまいなのだろうか、それとも夏のはじまりなのだろうか。むしあつい。しかし、いまぼくがいる場所は、涼しい。空気もそんなに湿ってはいない。ここは、東京という都会のまんなかにある、コーヒー・ショップの二階だ。
 コーヒー・ショップは街角に建っていて、通りに面した壁はいちめんガラス張りのようになっている。店内の色はダーク・ブラウンで統一し、落ち着いた気持になれるようにしてあるらしい。いろんなかたちの照明がいたるところにあ…

底本:『コーヒーもう一杯』角川文庫 1980年

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