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エッセイ

理想の窓辺にすわるとき

 理想の窓というものを、僕はときたま思い描く。自分にとっての、理想的な窓だ。そのような窓を、僕はまだ手に入れていない。しかし、好みの窓はあちこちにいくつかある。どの季節のどんな時間でも、その窓辺は楽しい。窓辺の椅子にすわり、外の景色を見るでもなく見て、ぼんやりとあいまいに、僕はそこで時間を過ごす。
 窓は、外と内側とが接する面だ。外を流れていく時間と、内側を経過していく時間が、それぞれまったく質の異なる時間だと仮定すると、窓辺の時間はどちら側だろうか。きっと内側だろう。内側のいちばん外だ。そしてそこから、外を流れては去っ…

底本:『アール・グレイから始まる日』角川文庫 1991年

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