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評論・エッセイ

女王陛下|アビーロードのB面

 彼女はその日の午後、郵便局へ行った。オフィスの郵便物を出すためだ。窓口には数人の列が出来ていた。その列に加わり、彼女は自分の順番が来るのを待った。
 あとひとりで自分の順番というときになって、彼女は自分の前にいる人と窓口の女性とのやりとりを、ふと聞きはじめた。彼女の前にいたのは、三十代後半の男性だった。彼は、一通の封書を投函するため、それに必要な切手を買っていた。三枚の切手をひとつずつ指先でつまみ、舌の先で湿らせ、その男性は封筒の端に貼っていった。女王の横顔が印刷してある小さな切手だ。
「なかなかいい女の…

底本:『アール・グレイから始まる日』角川文庫 1991年

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