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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

トリス・バー。バヤリース・オレンジ。バッテンボー

 バッテンボー、という言葉は死語だろうか。老いも若きも、日本じゅうどこへいっても、誰もがこの言葉を口にしていたあの頃、というものがかつて存在した。あの頃がいつ頃だったか、昭和の何年あたりだったのか、資料がないと僕には正確なことはわからない。僕はその頃はすでに確かにいたけれど、単なる子供だったから、年号の記憶などありっこない。ゆうに半世紀は昔のことだ、とあてずっぽうを書くけれど、はずれてはいないと思う。
 単なる子供として体験し、きわめて深く認識したあの頃というものを、いまの僕から引き出すことは可能だろうか。いまも忘れてい…

底本:『白いプラスティックのフォーク──食は自分を作ったか』NHK出版 2005年