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評論・エッセイ

カルピスについて思う

 少なくとも僕の体験のなかでは、カルピスは女性と深く結びついている。カルピスは僕の幼年期から青年期にかけて、女性の一部分であった、という言いかたをしてもいい。カルピスに性別があるなら、それは女性ではないか。
 子供の僕が友だちの家へ遊びにいく。あるいは、どういう間柄だかよくわからないままに、親戚の家へ連れていかれる。友だちのお母さんやお姉さん、そして親戚の叔母さんが、夏でも冬でも、僕にカルピスを出してくれる。友人の父や兄、あるいは叔父など、男が出してくれたカルピスというものを、僕は一度も体験していない。
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底本:『白いプラスティックのフォーク──食は自分を作ったか』NHK出版 2005年

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