片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

エッセイ

砂糖は悲しいものだった

「三歳、四歳、五歳の頃は、家のなかでしょっちゅう迷子になってたのよ。でも、小学校に上がってからは、それがぴたっとなくなったの。それだけ成長したからだろうと思うけれど、そんなに急に成長するものなのかしら」
 七歳の僕に友だちのお母さんがそう言った。すっきりと細身の体にいつも着物をきちんと着た、色白細面の見本のような、きれいな人だった。夢のなかから聞こえてくるような声は、たいそう魅力的なものだった。
 友だちは僕とおなじ学年だったから、おそらくおなじ年齢だったのだろう。彼の自宅は本来は武家屋敷なのだが、そこはあ…

底本:『白いプラスティックのフォーク──食は自分を作ったか』NHK出版 2005年

このエントリーをはてなブックマークに追加