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評論・エッセイ

林檎の樹の下で

 空から雪が降る。その雪が山につもる。春になって、雪どけがはじまる。雪どけの水は山から谷をくだり、平野の河を流れる。その河の水が農産物を育てる。人間が、その農産物を管理する。
 自然と人間の共存、あるいは、自然の片隅を利用して人間が生きていくことに関して、大昔から有効であった図式が、大小の差はあれ、これだ。
 ワシントン州のヤキマ・ヴァレーも、この図式にあてはまる。コロンビア河の支流のひとつであるヤキマ河によってつながれているふたつの盆地であるヤキマ・ヴァレーは、七十種をこえる農産物の産地だ。アメリカ国内で…

底本:『コーヒーもう一杯』角川文庫 1980年

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