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評論・エッセイ

ラスト・アメリカン・カウボーイ

 夏の終わりちかく、カンザス州のどまんなか。
 どの方向に見渡しても、地平線までまったいらな、農業国アメリカの、途方もなく広い畑だ。
 早朝なのに、青い空には熱い太陽が、すでにかんかん照りだ。
 大地からは、水蒸気が、もうもうと立ちのぼっている。
 昨夜、雷鳴まじりの雨嵐があった。あのときのどしゃ降りの雨が大地にしみこみ、朝の太陽の熱で再び水蒸気として天に帰っていく。
 その水蒸気の立ちのぼる畑の大平原を、西から東へ、ハイウェイがぶち抜いていた。
 も…

底本:『アップル・サイダーと彼女』角川文庫 1979年

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