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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

1月7日 ダブル・バーガー

 巨大な空の全域を、分厚い雲が灰色に埋めていた。さまざまな色調の灰色の雲が、複雑に何層にも重なりあい、その結果として、空の雲は分厚かった。重層している雲の、どの層も、急速に動いていた。深く広い空の、ここが自分の高さだと定めた位置で、雲の層はまるでそれぞれが雲の大河のように、一定の方向に向けて急速に流れ続けた。
 一九七七年モデルのキャデラック・エルドラードという2ドア・クーペで走っているぼくから見て、右斜め前方から左の後方に向けて、雲は流れていた。早朝から、ずっとそうだ。今日、朝早くにモーテルを出たときから現在に至るまで…

底本:『すでに遥か彼方かなた』角川文庫 一九八五年