僕にとっての個人的なスタンダード
いまから百年前、おそらくまだ青年の名残をとどめていた年齢の頃、僕の祖父はハワイへ渡った。僕の父親はハワイで生まれてそこで育ち、カリフォルニアその他で成長の仕上げをした。ハワイとアメリカの日系人社会が、幼い頃から僕の身辺のすぐ近くに、いつもあった。手ざわりや感触、あるいは雰囲気だけではなく、英語という言葉による認識の問題として、ハワイとアメリカの日系社会は、育っていく僕に大きな影響をあたえた。
いまでもハワイへいくと、僕は少なくとも自分だけの頭のなかでは、自分を日系社会のなかに置き、そこからハワイを見る。単にアメリカで…
底本:片岡義男エッセイ・コレクション『僕が書いたあの島』太田出版 1995年
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