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書評

雨が、ぼくにオードリー・フラックの画集を開かせた

 窓の外にいま午後がある。その午後は、いっぱいに雨を持っている。梅雨の雨だ。今年は、長くて冷たい梅雨だという。なるほど、いまはたしかに肌寒い。
 雨を見ながら、ふと考えた。雨は不思議だ。
 もしいま雨が降っていなかったなら、窓の外に見える午後の景色は、丘やら森やら小さな民家やら電柱やらが、おたがいにばらばらにただ存在しているだけのきわめて不統一な景色であるはずなのだが、雨が降っているおかげで、本来ならばらばらであるはずの景色が、ひとつのトータリティを獲得している。
 雨がリアリティをひとつに統…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『なぜ写真集が好きか』太田出版 1995年
『ブックストアで待ちあわせ』新潮社 1983年所収

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