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『週刊朝日』書評「週刊図書館」より4作品を公開

昨年で休刊した『週刊朝日』で連載されていた「週刊図書館・今週の一冊」から、片岡義男による書評4作品を本日公開いたしました。

これぞ写真集と僕は確信して言う。写真集にしか出来ないことが、この一冊の写真集のなかでなされている。そのことに、心から驚く。高原を削り落とし、山にはトンネルを穿ち、低い土地には土を盛り、池もおなじく土で埋められて姿を消し、平らの土地がしばらく続くなら、その平らな上で延びていく、自動車のための専用道路。出来る限りの速度で自動車を走らせ、衝突を回避するための一時停止をまったくなしにするための、立体で交差させるという工夫。その完成された造形は、ある視点に立つなら、この上なく美しい。
〈この書評で取り上げた本〉『立体交差 ジャンクション』(大山顕著/本の雑誌社 2019年)

(『週刊朝日』2019年9月13日号掲載)

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この本の題名のなかにある、凸凹という表現の意味を、著者の大竹さんは本文の第一行で解き明かしている。「東京は坂と丘と谷の街である」という意味だ。こんな地形のところによく江戸を作ったものだ、と不思議な思いをするほどに、東京は凸凹している。凸凹は海抜に置き換えてもいい。ゼロ・メートル地帯、という言いかたで知られているのは、海抜がゼロ、つまり海面と陸地がおなじ高さの地域だ。反対は高台だろう。
〈この書評で取り上げた本〉『東京凸凹散歩 荷風にならって』(大竹昭子著/亜紀書房 2019年)

(『週刊朝日』2019年12月20日号掲載)

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太平洋戦争のさなか、アメリカの陸軍と海軍とは、日本語の修得を目的として、学校を設立した。1943年、著者のハーバート・パッシンは、妻と生まれたばかりの息子をかかえ、間もなくアメリカ陸軍に召集されるのだろうと考えながら、仕事探しの日々だった。会話のなりゆきで自分には日本語への興味があることを著者は語り、軍隊の日本語学校に入ることを勧められる。1944年の春、アメリカ陸軍日本語学校のA中隊に配属された著者は、ミシガン大学で日本語の授業をうけた。18カ月の訓練を終えると少尉の位が用意されていたという。
〈この書評で取り上げた本〉『米陸軍日本語学校』(ハーバート・パッシン著 加瀬英明訳/ちくま学芸文庫 2020年)

(『週刊朝日』2020年7月10日号掲載)

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勤続30年に近い男性の社員が、打ち合わせに訪れた他社の社員と会うため応接室に入った。打ち合わせを一方的に切り上げたその男性は、他社の社員が帰ったあとの応接室から、その他社の別の担当社員に電話をかけた。「この大事な打ち合わせになぜ女なんかよこしたのか」と、怒り狂ったという。ごく最近、まだ現役の会社員から聞いた話だ。この30年の低成長で企業中心の考えかたはいちだんと強まった、と著者は言う。社会ぜんたいが細ると、男性による支配は強まり、なおかつ、新たな局面を迎える。
〈この書評で取り上げた本〉『企業中心社会を超えて 現代日本を〈ジェンダー〉で読む』(大沢真理著/岩波現代文庫 2020年)

(『週刊朝日』2020年10月2日号掲載)

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2024年1月12日 00:00 | 電子化計画

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