VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

お知らせ

エッセイ『なぜ写真集が好きか──片岡義男エッセイ・コレクション』より7作品を公開

エッセイ『なぜ写真集が好きか──片岡義男エッセイ・コレクション』(太田出版/1995年)より7作品を本日公開いたしました。

ニューヨーク近代美術博物館による写真集『アメリカの子供たち』は、19世紀半ばから現代(1970年代後半)までのアメリカの子供をテーマにした60枚の写真で構成されている。大人の写真家が撮った写真は、子供の描写であると同時に、大人の、あるいは大人であることのメタファーでもある。時代によって写真の意味も撮影のスタイルも変わってくるが、子供を被写体にした写真には、早くから社会派と審美派という、2つの流派があったようだ。
参考リンク:『AMERICAN CHILDREN』(1980/ニューヨーク近代美術博物館)

こちらからお読みいただけます

『五〇年代』という写真集は、確かな腕を持った写真家たち12名が、1950年代に撮った写真で、当時のアメリカを再現している。大雑把に言えば報道写真だが、事実の重要性とは別に、主体的な表現作品としての重要性も持っており、構成にも冷静さがある。例えばタイトル・ページにある風景から、道路を走る自動車を指先で隠してしまうと、その風景は完全に一九四〇年代のものとなる。テキサコの広告看板もついでに隠してしまうと、こんどは一九三〇年代となる。一九五〇年代が始まったときのアメリカには、一九三〇年代がまだふんだんにあった。
参考リンク:『THE FIFTIES』Panthen Books(1985)

こちらからお読みいただけます

ジョエル・マイエロヴィッツ(1938 - )の写真集『ジ・アーチ』には、セントルイスのザ・ゲイトウエイ・アーチを、一日の中のさまざまな時刻に、いろんなふうに撮影したカラー写真が全部で三十七点収録してある。どれも完璧であり、それがひとつに緊密に集まって、これ以上はどうすることも出来ないほど美しい完成度に到達している。何度見てもそのたびに、自分のどこか深い部分がつき動かされるのを僕は強く感じる。ジョエルが撮影したこのアーチの、抽象的な背景は時間だと、僕は思う。一日のなかにある、さまざまな時刻だ。
参考リンク:Joel Meyerowitz『The Arch』(1980)

こちらからお読みいただけます

ヴェニスはロサンゼルス西部の観光スポット。1904年、煙草によって百万長者となったアボット・キニーという人物が、当時のサンタモニカのすぐ南に160エーカーの沼地を手に入れ、ここにアメリカのヴェニスを作ろうと思った。イタリアのヴェニスさながらに運河システムを作り、橋をかけ、ホテルを建て、商店街のありかた全体も、ヴェニスをお手本にした。しかし1920年にキニーが死去してから街は様変わり。荒廃しどん底まで落ちたが、80年代にスタイリッシュな場所として生まれ変わった。このようなヴェニスで、特に自分の興味をひいた人たちのポートレートをクローディオ・エディンガー(1952 - )が撮影したのが写真集『VENICE BEACH』だ。
参考リンク:「Claudio Edinger fine art photography」(Chelsea Hotel 1978/ Venice Beach 1984)

こちらからお読みいただけます

バロン・ウォルマン(1937 – 2020)による写真集『スーパースパン』はゴールデン・ゲート・ブリッジに関する、スリムな仕上がりの美しい本だ。ゴールデン・ゲート・ブリッジは、例えばクリエイションという言葉を使って全く恥ずかしくないほどに優れた、いろんな意味でたいへんに立派な建造物だ。歴史であれ現状であれこれほど数多くのドラマに満ちた建造物は、僕の好みでは、他にないと思っている。ブリッジと周辺の自然との関係だけを綴っても、一冊のドラマに満ちた本を、ゆうに作りうるだろう。
参考リンク:「ICONIC IMAGES」Golden Gate Bridge by Baron Wolman

こちらからお読みいただけます

フランセスコ・スカヴューロ(1921 – 2004)は名士や有名人、著名人、文化人など、いろんなジャンルの人たちのポートレートを非常に数多く撮影し、その作品はアメリカで発行されている有名な雑誌のすべてに及んでいると言ってもいい写真家だ。そのスカヴューロが自分の写真の被写体として最も好んでいるのは、女性だ。女性を写真に撮るのが本当にもうたまらないほど自分は大好きで、その大好きなことが自分の仕事の中核となっているので自分はとてもうれしい、と彼は語っている。スカヴューロにとって女性は、美、というものの具現であるからだ。『スカヴューロの女たち』はそんな彼の女性のポートレートだけを集めた本だ。
参考リンク:「Francesco Scavullo」artnet

こちらからお読みいただけます

リチャード・エステス(1932 - )という画家は、ぼくの大好きな画家のひとりだ。ロードサイド・ダイナーばかり描いたジョン・ビーダーとならんで、ぼくの大ご贔屓だ。画集『リチャード・エステス 都市のランドスケープ』に収録されている彼の絵を一枚ずつ見ていくと、ほんとに見飽きない。どの絵も、感嘆の嘆息とともに、つくづくとながめてしまう。実際に存在するニューヨークの都会風景の断片を、こまかなディテールをきちんとひとつひとつ描きこむ「まるでカラー写真のような」リアルな作風だが、ここまで克明に描きこまれると、全体はファンタジーのような世界に近づいていくから不思議だ。
参考リンク:「Richard Estes’ Realism」(スミソニアン・アメリカ美術館)

こちらからお読みいただけます

2022年9月20日 00:00 | 電子化計画

このエントリーをはてなブックマークに追加