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エッセイ『「彼女」はグッド・デザイン』より9作品を公開

『「彼女」はグッド・デザイン―片岡義男エッセイ・コレクション』(太田出版/1996年)より9作品を本日公開いたしました。

一時間おきに三人の男性に、彼女は会ってきた。費やした時間は合計で三時間をすこしこえるだけなのだが、彼女にとっては長すぎるほどに長い時間だった。完全にぶちのめされた状態で、彼女は部屋のある建物の駐車場まで、帰ってきた。自分のステーション・ワゴンの運転席で、彼女は虚脱していた。

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風呂を出た彼女はバスローブをまとい、西側にあるバルコニーに出てみた。バルコニーいっぱいに、午後はじめの西陽が明るく当たっていた。その陽ざしのまんなかヘデッキ・チェアを持って来て、彼女は体を横たえた。バルコニーでの時間を楽しんだあと、彼女は服を着た。至福に満ちた静かな午後が、そこからはじまった。

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中二階の廊下の窓から射し込む午後の日差し。その光と窓の格子が作り出す影を見ながら、彼女はアンドリュー・ワイエスの1枚の画を思い出す。彼女はバルコニーへ出てみた。どこからも死角になった広いバルコニーいっぱいに、西からまぶしく陽が当たっていた。その陽ざしを顔や体に受けた彼女は、あることを思いつく。

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彼女は三十代なかばだ。アメリカへいって十年たってしまった。半分ちかくはアメリカ人になってしまった、でも残りの半分の、主として情緒的な部分は、日本人のままで、このままずっと変わらずにつづいていくだろう、と彼女は言っている。そんな彼女が気がついた、切実になつかしい日本のものとは。

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彼女は、小さな島へ帰ってきた。大きな島から十分たらずだ。飛行場に降りて、フォルクスワーゲンの乗り合いバスで、ホテルまで帰ってきた。森のなかに、一戸建てのポリネシアふうのバンガローを散らしたとてもいいホテルだ。ベランダの籐椅子に体をまかせ、とてもゆったりした気分で緑の森や青い空をしばらくながめた。

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「あなたはとても安定している人なのよ。あなたとふたりでいるときには、その一定した安定感がとてもいいのだけど、第三者を鏡にして、そこに映ったあなたを見ると、それは、たとえばニュアンスの変化のなさでもあるのね」——的確な判断力を持った、信頼する友人の言葉に、彼女は行動を起こします。

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ホテルの広い内庭の中心のひとつがプールだった。夜の、やや遅い時間のいま、プールはその内部にある照明によって、この世ならざるような青い透明色の不思議な生き物のようにも見えた。「さっきまで、泳いでいる人がいたよ」と、彼は言った。

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三十八歳の母親は、離婚したばかりだ。それまで住んでいた家は夫から彼女への、慰謝料にばけた。夫が慰謝料を払わなければならないような離婚だった。母親と十七歳の娘は、母親の同性の友人のもとへ、身のまわりの荷物とともに、ステーション・ワゴンで向かっていた。

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ふたりは二台のオートバイで出発したが、二時間後に、彼のオートバイが不調になりはじめた。農家の庭の片隅に彼はオートバイをあずかってもらった。荷物を彼女のオートバイに移し、目的地に着くまでずっと、彼はリア・シートでパッセンジャーだった。

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2022年4月5日 00:00 | 電子化計画

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