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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

人生は引っ越し荷物

 僕は久しぶりに引っ越しをした。五丁目から二丁目まで、歩いて五分かからない距離の引っ越しだ。五丁目の家にはちょうど二十年、住んだ。五丁目の旧邸、と言いたい。コンクリート二階建ての大きな家だ。部屋数がいくつあったのか、指を折って数えながら、思い出さなくてはいけない。
 もちろん僕が建てた家ではなく、僕で三代目の中古だ。おおざっぱな間取りの、住みやすい家だった。ぜんたいのスペースには充分すぎるほどの余裕があったし、収納のためのスペースも、あちこちに広くあった。入る必要のない部屋は、どれもみないつのまにか、納戸や物置のようにな…

底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 2000年

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