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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

引っ越しという自己点検

 いろんな視点から自分を点検し考察しなおすための、たいへんな好機のひとつは引っ越しではないか。六年前におこなった引っ越しは、僕にとっては確実にそのとおりの機会だった。そのとき点検し考察しなおした自分というものは、それ以後なんら揺らいでも薄らいでもいない。
 二十五年ほど住んだ家から、足早に歩いて五分ほどの新しい家に引っ越した。人はただ歩いて五分だが、持ち物はすべて引っ越し用の荷物にして、トラックに載せなくてはいけない。家の内外に物を置いておくスペースは充分すぎるほどにあった。その家で営まれた日常生活の痕跡と言っていい、大…

底本:『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年

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