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評論・エッセイ

ヒロの一本椰子

 昔のハワイ人たちは森林をおそれていた。メネフネなど、不思議な生き物が森のなかにたくさん住んでいるのだと信じていて、そのため、たとえば森のなかに住居をつくったりはせず、海岸の水ぎわの、森のないあたりに小屋を建てて住んでいた。
 非常に厳格なタブーの制度が、昔のハワイにはあった。社会はカースト制になっていて、いちばん位が高いのは王であり、その次は酋長たちだった。一般の平民の位は、下から二番目だった。いちばん下は賤民だったから、事実上は平民がいちばん下だった。
 さまざまな神の代理人として君臨していた王や酋長た…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『僕が書いたあの島』太田出版 1995年
『町からはじめて、旅へ』晶文社 1976年所収

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