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評論・エッセイ

4月1日 本物

 一九六〇年代のなかばに、ホノルルのビショップ博物館で見た昔のハワイのサーフボードは、本物との対面、というような感銘をぼくにあたえてくれた。それ以前にもこの博物館へは何度もいき、展示してあるサーフボードも見ているのだが、波乗りに対するぼく自身の興味は一九六〇年代のなかばからはじまったので、それ以前にはおなじものを見てもさしたる感銘はなかった。
 いまでもハワイへいくと、たいてい一度はビショップ博物館にたちより、いろんな展示品を飽かずにながめる。昔のサーフボードの前には、おおげさに言うなら畏敬の念を持って、しばしたたずむ。…

底本:『すでに遥か彼方(かなた)』角川文庫 一九八五年
片岡義男エッセイ・コレクション『僕が書いたあの島』太田出版 一九九五年収載

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