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エッセイ

『草枕』のような旅を

 夏目漱石の『草枕』という小説を、いまになってやっと、僕は読んだ。たしかにやっとだが、読み終えてふた月ほどたついま、少なくとも僕にとっては、この小説を読むための最適な時は現在をおいて他になかった、と思っている。夏目漱石の小説が中学や高校で必読書のように推薦されていたり、教科書にごく短く抜粋されていたりするのが、僕には不思議でならない。中学生や高校生が読んでも、言葉を順にたどっていくだけで精いっぱいであり、それ以外の受けとめかたはできないだろう。いくつかの視点から、かなりの余裕を持って『草枕』を楽しむことが、いまようやく、僕にでもできる…

底本:『ピーナツ・バターで始める朝』東京書籍 2009年

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