VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

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書評

「グレーテスト・ヒッツ」

 昨年の夏、真夏日の夕方、僕はひとりで新宿を歩いていた。新宿駅の南口から道を渡り、サザン・デッキとかいう通路をその奥に向かいながら、僕の頭のなかには、とりとめなくいろんなことが浮かんでは、消えていた。前後の脈などまったくなしに、トゥルーマン・カポーティの短篇小説すべてを一冊にまとめたペーパーバックがあるといいのに、という願望が頭の片隅に小さく浮かんだ。
 サザン・デッキの西側の通路を僕は歩いていた。JRの線路を越える陸橋の向こうに、紀伊国屋書店があるのを、僕の頭の別の片隅が、なんとなく認識した。ついでだからその書店の洋書…

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