「イン・コールド・ブラッド」
トゥルーマン・カポーティに関して僕は晩生(おくて)だった。二十歳のときに『ア・クリスマス・メモリー』という短編を読み、これはすごい、という強い感銘を受けたのだが、「これ」とはなにか、「すごい」とはどういうことなのか、といったことをその時その場で自分なりにつき詰めて考える、というようなことはいっさいせず、そのままカポーティの作品には接することがないままに、二〇〇六年の冬まで来てしまった。
彼のペーパーバックは一九六十年代のものからすべて持っている。それ以後も、版が変わって表紙が新しくなったりするたびに、目につくかぎり買っ…
前の作品へ
次の作品へ