VOYAGER

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評論・エッセイ

アメリカの小さな町

 ハイウェイから離れて、田園地帯の中の二車線の道路を行く。あたりは、絵に描いたような美しさだ。
 ゆたかな緑が広がり、空気はきれいで、道路には、ぼくたちの乗った自動車しか走ってはいない。
 道路の脇に、町の名を書いた標識が立っている。この地点から、あなたは町に入るのですよ、ということを伝える標識だ。人口が、町名の下にそえてある。二〇一一名、などという数字が記憶に残る。
 人口が二千名のアメリカ東部の小さな町。いったい、どのようなたたずまいなのかと胸がときめく。
 緑の樹が多くなり…

底本:『アップル・サイダーと彼女』角川文庫 1979年

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