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書評

アメリカらしさの核心のひとつを体現している人の人物像を、完璧に近い傑作小説で読むという感動

 トーマス・コッブという作家の最初の長編、『クレイジー・ハート』は、たいへんな傑作だ。カントリー・アンド・ウエスタン・ソングの世界のなかでつかみ得るアメリカらしさの核心的なハートを、彼は素手でつかんで僕の目のまえに差し出してくれた。
 主人公のバッド・ブレイクは五十七歳だ。カントリー・アンド・ウエスタンの世界で彼は優秀なソング・ライターであり、スター歌手としても最高の地点に立ったことがある。ギターを弾かせればマール・トラヴイスをひとまわりもふたまわりも大きく深くしたような人であり、歌うとレフティ・フリゼルをおなじくひとま…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『本を読む人』太田出版 1995年

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