早稲の田に風はほんとに吹いたか
高校の三年生になると大学進学に関するさまざまなことが話題になってきていたが、ぼくは大学へいく気などまったくなかった。ぼくは学校の勉強が好きではなく、勉強とはデスクにむかって教科書や参考書にアンダーラインを引くことだと考えていたから、これから大学へいってさらに四年も勉強することなどまっぴらだ、という考えでいた。
したがってぼくは、高校を出たら就職する気でいた。学校でアンケート調査などがあると、将来の希望する職業、などという項目に対しては、「海賊」とこたえたりしていい気持になっていた。
しかし、海賊はロマ…
底本:『コーヒーもう一杯』角川文庫 1980年
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