旅と小説はどのように関係し合うのか
小説を書き始めてから三十数年が経過している。小説と呼び得るものを何編くらい書いたか、見当がつかないほどたくさん書いた、と自分では思っているが、仔細に検討するならじつはさほどの数ではないのかもしれない、という気もする。三十数年にわたって、要するにかなりの数の小説を書いたのだが、小説を書くにあたってまだ一度も体験していないことが、いくつかある。どうでもいいことはいつまでも体験しなくてもいっこうに構わないのだが、ぜひとも体験してみたいと願っていることが、ひとつふたつある。
そのうちのひとつ、これはもっとも体験してみたいと思…
底本:『ピーナツ・バターで始める朝』東京書籍 2009年
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