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評論・エッセイ

知らぬ町 雨の一日 冬至なり

 季節感を楽しむために日本はある、と僕は信じている。日本は季節変化の国だ。1年365日のなかで、四つのまったく異なった季節が、完璧にひとめぐりする。世のなかは三日見ぬ間の桜かな、という言葉がある。これを文字どおりに解釈すると、日本の季節は3日ごとにそのニュアンスと質を変化させている、という意味になる。確かに、日本の季節変化は多彩で早い。それを楽しむためには工夫が必要だ。しかも素朴さをきわめたような工夫が。
 夏を楽しむための法則みたいなものは、僕は僕自身のためにすでに考え出してある。6月1日に、早くも真夏のようになってい…

底本:『アール・グレイから始まる日』角川文庫 1991年