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エッセイ

なんでも好きなものを食べたまえ

 僕にとっての日本はオキュパイド・ジャパン、つまり占領下の日本だった。一九四五年夏の敗戦からそれは始まり、歴史年表の上では一九五一年九月、サンフランシスコ講和会議で対日講和条約が調印されたときまで、続いた。赤子そして幼子として、僕は戦中をかすかに知ってはいるのだが、物心ついたのは、広島に投下された原子爆弾のきのこ雲を見た、一九四五年八月六日の夕方だ。そしてその日の朝には、その原子爆弾が広島上空で炸裂したときの閃光を見ている。物心ついた自分とは、いかにおぼろげで頼りないものではあっても、社会的な広がりのなかで自覚された自分であり、その自…

底本:『ナポリへの道』東京書籍 2008年

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