VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

自殺するマヨネーズ

 日本の企業が作って売り出したヴィニールのチューブ入りのマヨネーズ、というものを初めて手にしたのはいつ頃のことだったか。ある日それは自宅にあった、ということは記憶している。ではそれは、いつ頃だったのか。なんの根拠もなしに、しかもきわめておおざっぱに見当をつけると、十七、八歳の頃、さもなくば二十二、三歳の頃か。
 あるひとつの事実を、薄弱な根拠に立って、過去のどこかにその位置を特定しようとするとき、傾向として時間軸のこちら側へ寄ってしまうことが多い。現実はもっと早くに具体化している。つまりいま僕があやふやにつける見当よりも…

底本:『白いプラスティックのフォーク──食は自分を作ったか』NHK出版 2005年

このエントリーをはてなブックマークに追加